杉田議員の発言を受けて -「人間性 = humanity」を大切に-
7月25日
さっきまで、この記事を書くかどうかすごい迷っていました。
たくさん書きたいことはあるけど、それと同時に何を書けばいいか分からない。
ここ数日、Twitterをはじめインターネットで話題になっている杉田水脈議員の発言、それを庇うような二階幹事長の言葉、皆さんも耳にしたのではないでしょうか。
もし、ご存知ないようでしたら少し調べてみてください。
僕はゲイの当事者として、またLGBT+に関して声を発している者として、すごく思うところがあります。心の中がずっとモヤモヤしています。
でもそれを全部ここで発することができる程、僕は書き上手ではありません。
なので、今日は論点を絞って書いていきます。
LGBT+は日本で差別されていない?
杉田議員の一連の発言で問題視されている言葉の1つに「生産性」という言葉があります。
「子どもを作れない同性愛者は生産性がない、従ってこのような人々に税金を使って支援する必要はない」と。
多くの人が述べているように、そもそも同性愛者に関わらず『生産性』なんて言葉で人を価値づけることは論外です。
僕には「国の将来のため、未来の納税者を確保するため、子どもを産める人は子どもを産めない人よりも価値がある」と聞こえます。
ただ、僕にはこれ以外にもさらに気になった発言があります。
それは彼女が「新潮45」のコラムで書いた「LGBTは日本で差別されていない」という記述。
こうやって言い切ってるんだからきっと何か根拠があるに違いありません。何か信用できる情報源を元にこういった事を書いたのでしょう。
ただ、どういう情報を参考にしたのかは分かりませんが、ただひとつ確実に言えることは「僕自身が差別されている人の一人」だということ。
彼女は、僕が何でイギリスに住んでいると思っているのでしょうか。
僕は昨年の9月にイギリス人男性とイングランドの法の下に同性婚をしました。
なのでイギリス(北アイルランドを除く)では正式に結婚した夫夫として認められています。
また、夫は苗字を僕と同じものに変更したので、僕たちは同じ苗字を持っています。
しかし、日本では同性婚は法律で認められていません。
ここ数年、幾つかの自治体は同性パートナーシップ制度を開始しましたが、法的効力は無いので僕達は日本に行くと夫夫ではなく「他人」となります。
従って僕の夫は日本に住むための配偶者ビザを取得する事ができません。
そうすると自動的に僕がイギリスの配偶者ビザを取得してイギリスに住む必要が出てくるのです。
(既に何らかのビザで日本に住んでいる場合もありますが)
僕の他にも「パートナーの国では同性婚が認められているから…」という理由で日本を出た人は大勢いるはずです。
僕だって本当は日本に住みたい気持ちを持ちつつイギリスに住んでいます(イギリスも好きですけどね)。
このように異性カップルは保障されている権利を保障されていない同性カップルは果たして差別されていないと言えるのでしょうか。
こういった事の他にも、就活での差別やアウティングの問題、制服の決まりや使用トイレの制限など、様々な問題が事実としてある中で、一体どうやって「LGBTは日本で差別されていない」などと言えたのでしょうか。
なぜそんなに断定的に述べられたのか、僕には理解できません。
普通って何?
また、インターネット番組の中で彼女は異性愛者の恋愛を「正常」や「普通」と何度も表現していました。
まるで同性愛や両性愛など、異性愛ではないものを「異常」とでもするかのように。
では、そもそも「普通」って何ですか?
多数派=普通 なのでしょうか?
そして 多数派=普通=正常 なのでしょうか?
僕はそういった考えはとても驕っている思います。
多数派と異なる=異常 なんて論理がまかり通るなら、この世界は異常者だらけです。
僕は同性愛者ですが、異性愛者の友達や家族と何ら変わりなく生活を送っています。
ただ多数の人とは異なるセクシュアリティ・性自認を持っているだけで「正常・普通でない」なんて言われたくありませんし、そんな事を言う人は自分を何様だと思っているのでしょうか。
ヘイトの前に考えてほしい
最後に、杉田水脈の『生産性発言』に関して二階幹事長は「人それぞれ政治的立場、いろんな人生観、考えがある」と述べていましたが、「多様な意見や表現の自由」と「差別・ヘイト」は違います。
LGBTだけではなく様々な人がヘイトスピーチの対象となっていますが、きっとヘイトする側の多くの人は具体的な理由や正しい知識を持つ事なくヘイトしていると思います。
「家族がそう言う方針だから」
「小さい頃からそう言われて育ってきたから」
「(正しいかどうかはさておき)こういうデータがあるから」
「よく分かんないけど変だから」
僕が大学で取った「差別と偏見の社会学」という授業で、インタビューに答えるヘイトする側の人達がこんな事を言っていたのを覚えています。
でも僕は差別・ヘイト・発言する前に考えて欲しいです。
「人間性」ということについて。
英語では「humanity(人間性) = 人への優しさ・尊敬・思いやり」と訳されています。
どんな人にもこういった気持ちを持って接する心構えが大切だと僕は思います。
そして、自分の意見を述べる前にまずは「人間性 = humanity」を大事にして欲しい。
そして正しい知識を身につけてから考えを表現して欲しい。
「つもり」の問題ではない
本当に最後、先述した授業の中で印象的だったことを紹介します。
差別発言を咎められた多くの人が言うこと。
「差別するつもりはなかった」
違います。
「つもり」があろうが無かろうが、あなたは差別をしたんです。
差別をしたくないのならまずは勉強して正しい知識を身につける必要があります。
「差別するつもりがなかった」のではなく「無知であった」だけ。
今回の一件で改めて思ったことは、杉田水脈議員だけではなく、僕を含めた当事者・非当事者みんなの間に正しい知識を広め、そして「人間性 = humaniy」を大事にする心構えを持つこと。
そのためにも特に当事者である僕たちは声をあげる必要があるのではないでしょうか。
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杉田みよ議員のご発言はここで初めて知りました。
私は同性愛に理解がある方ですが、ゲイリブ活動に関しては正直懐疑的な立場です。ゲイリブ活動家の暗い部分を知ってるからです。レインボープライド万歳!の立場でもありません。
日本で住みたいのに日本で同性婚ができない為に海外に住む人は確かにみえますよね。逆に、日本での生活が嫌で外国に逃げる人もいますが。「差別」にも色々ありますよね。白人を黒人とは言えないし、黒人を白人とは言えないしそういった区別はあると思います。生産性がないという発言は、私は一つの意見として受け止めました。ヘイトだとは思いません。
同性愛結婚を認めるかどうかは、本当難しい問題だと思っていますので、やたらと杉田議員に攻撃的になる意味はないと私は思ってしまいます。寧ろ自分と違う立場の人間に攻撃的になる方が怖いです。欧米社会が同性婚認めているから、ヘイトがないと言ったら違いますよね。同性愛者に対するヘイトは日本の比じゃないです。
ゆずきさん
コメントありがとうございます。
そうですね、個人的には「区別」という言葉もあまり好きではありませんが、人種、障害の有無、性別、年齢などみんな異なった特長を持っています。「生産性が無い」という発言がヘイトであるか・無いかというよりも、「生産性」という言葉を使う事は果たして政治的・社会的に公正であるのか、この発言で傷つく人がいるのでは無いかという事が論点だと思います。同性愛者に関わらず、病気や身体的な状況によって子どもを作れない異性愛者の方だって大勢いますからね。「子どもを作れないから生産性がない」という発言はLGBTという枠を超えた発言だと思います。そしてそういった「意見」はこの2018年に許されて良いのかどうかですね。
ただ、僕と異なった意見を持っている方が多くいることも理解しています。単に自分とは違う考えを持っているからそれを否定する、ということもしたくありません。お互いに理解しあって歩み寄っていければと。また、欧米社会の同性愛嫌悪は確かに無くなっていませんし日本より悪質なこともあるかもしれません。しかし、少なくとも僕が住んでいるイギリスで国会議員がこのような発言をしたら国民は黙っていません、即辞任、政界から追いやられるでしょうね。
>しかし、少なくとも僕が住んでいるイギリスで国会議員がこのような発言をしたら国民は黙っていません、即辞任、政界から追いやられるでしょうね。
そういう風に日本はなって欲しくないから言っているのです。私は自由な言論空間のある日本を望んでいます。
反対意見をただ封殺して、議員辞職などを求めるやり方は反発を生むだけです。のぞみさんが怒りを感じられたのはわかりますし、冷静な意見を発信して頂けて安心しています。ですが、のぞみさんのお友達のせいごさんが自民党抗議デモまで支持してツイートして活動家みたいな事をされているのは、失望してしまいました。私は過激な同性愛理解も嫌悪もどちらも嫌いな立場です。例えば私が危惧しているのは、個人的には同性婚支持派の私ですが、死刑は賛成の立場なのです。でも、そういうLGBT活動を熱心にされている人権活動家は死刑反対なのです。そういう政治の場にLGBTが利用されて、LGBT理解者は死刑反対しないと裏切り者みたいな感じになるのが嫌なのです。
ゆずきさん
自由な言論空間は大切です。でも「表現・言論の自由」と「差別」は違うと僕は思います。そして僕は今回の杉田氏の発言は「差別」に当たると感じています。本人の意図とは関係なく、優生思想とも取れる発言をしてしまったのですから。
また、ゆずきさんがご自身の考えを持っているように、僕も、せいごも、そしてみんながLGBTに関して異なる考えを持っていて、異なるアプローチをしています。そしてそれはお互いに尊重されるべきです。ゆずきさんの考えも、せいごの考えも(もちろん暴力や暴言が伴う程の過激な行動は許されるべきではありませんが)。ですので、ゆずきさんがプライドパレードやデモ等の活動に積極的では無いのは理解しましたし、それはゆずきさんの考えとして尊敬します。同じように、ゆずきさんもせいご達の考えを尊敬して、「失望した」などと不特定多数の人が閲覧できるこのコメント欄に書くのではなく、ご本人達に直接伝えてください。よろしくお願いします。
こんにちは。
日本では、酷暑が続き東京でも40℃を超える災害級の暑さです。
さて、今回の投げかけに、同性婚をしたNozomiさんだからこそ、真に説得力のある主張と感じました。
電通の調査によると、日本には人口の7%がLGBT、そのマーケットは6兆円もあるとの発表があります。
確かに、子孫を残すことはできないけど、可処分所得は高く、経済性があると言えます。
それゆえに、養子縁組というかたちで、恵まれない子供達を幸福にすることも経済的に可能だとも言えましょう。
そのため、QOLや幸福度をkind of生産性と読み替えれば、相応の経済効果たる生産ポテンシャルが高いとも言えます。
また、LGBTの多くは感性に長けた人財が多いため、サービス、デザイン、ファッション、美容、建築、娯楽などの産業でその能力を発揮し生産性を高めていることも付け加えて言及しておきたいと思います。
このようにして、社会にとけ込んでいるLGBTの存在を直視し認め共に生きていることを知ってもらいたいという思いに至りました。
他方、かつて女性は過去長らくの間、男性優位の社会が続き、これを嘆き、問題視し、今では女性活躍社会とも呼ばれ女性役員や管理職登用を声高に掲げる世の中へと変化させてきました。
しかしながら、今度はさらに少数派のセクシャリティーを蔑視して、かつて女性が虐げられてきたようにLGBTを疎ましく思っている事実は否めません。
ですから、このような事態へと至ってしまっているのだと理解していますが、基本的にはいかなる性も平等に自由と幸福を追求する権利ごあると信じて疑いません。
Justinさん
日本の暑さのことはここイギリスでもニュースに取り上げられています。
お身体にお気をつけてお過ごしくださいね。
仰る通りです、いかなる性別であろうがセクシュアリティであろうが性自認を持っていようが、僕たちには平等な幸福と自由を求める権利があるはずです。何も「特別扱いしろ」とは言っていません。異性カップルの方が保障されている事を保障してほしい、LGBT+ではない人が何不自由なくしていることを、僕たちにもさせて欲しいと言っているだけですからね。
僕は感性に長けた者という訳では全くありませんが笑、一生懸命働いていますし経済や社会への貢献はしているつもりです(イギリスでですが)。異性愛者の方や他の色んな方と同じように暮らしているだけです。実は気づけば周りにLGBT+の人は溶け込んでるんだよ、ってことを多くの人に気づいて欲しいですね。
感情の奥の部分をさらけ出して問題提起してくださったこと、勇気が必要だったんじゃないかなぁと思います。
私は仲の良い友人や先輩がLGBTで悩みや生きにくさを目の当たりしているので、Nozomiさんのこともなんだか自分のことのように考えてしまい胸が締め付けられる思いになりました。(おなじイギリス婚姻カップルですし親近感を感じています♪)
まだまだLGBTの方が生きにくい世の中ですが、Nozomiさんを応援しています!(^^)
hihi momoさん
温かいお言葉、ありがとうございます。とても励みになります。LGBTの当事者ではないアライの方の支えもあって、一歩ずつ良い社会になるように進めれば良いと思います!
色々とまだ自分の中で意見がまとまりませんが…
とりあえず、まずは、この話題を取りあげて下さったことをありがとうございました。私もずっとモヤモヤしていたのでここでもう一度考えることが出来て感謝しかないです。
私は杉田議員の記事を目にした瞬間、全身の血液が瞬時に沸騰するくらいの怒りを感じました。
私自身、結婚10年以上の兼業主婦ですが子供はいません。予定もないです。自らあえて選択した結果です。ならば私も私の夫もその理屈では「生産性のない人間」なはずです。なのに今回はLGBT+だけがやり玉に挙がっているように思います、そこに違和感を覚えました。
初めから差別主義の意図をもって文章を書いたとしか思えないです。恐ろしいことです。議員はもとより常識のある人間のやることではありません。これで「差別するつもりはなかった」は到底通用しないと思います。
先ほど、今朝のニュースで最初に取り上げられました。そこでコメンテーターが「私には子供がいません、隣に座る○○さんにも子供がいません、ならば我々も生産性のない人間となります。統計では日本の夫婦の約1割が子無し夫婦です。これはLGBT+で区切る問題ではないと思います」と言いました。
国民の為に国があるのではなく国の為に国民がある、の思想になってしまってないか、という話になりこのニュースは終わりました。
LGBT+で区切ることではないのは明らかなのに、敢えてLGBT+のこととしたところに差別があると思うのですが、そこを深く追及することなく次のニュースへいってしまったのが残念でした。
とりとめのない文章でごめんなさい。まだまだ感情的なのが抜けずまとめられません。
いつも冷静なNOZOMIさんは立派だと思います。今後も発信することをやめないでください。
Yukoさん
とりとめのないだなんて、とんでもございません。コメントありがとうございます。最後のお言葉には本当に励まされました。
仰る通り、これはLGBTという枠を超えて様々な人を巻き込んだ問題であると思います。声をあげるべきなのはLGBTの人だけではありませんよね。杉田議員本人の意図は関係なく、LGBTを含め様々な人を傷つけてしまったと思います。
また「国民の為に国(社会)があるのではなく、国(社会)のために国民がある思想になっている」とは本当にその通りですね。僕は杉田議員の発言を擁護する人がFB上でこの思想に基づいた事を述べていたのを見て、とてもショックでした。
ただ、この一件がインターネットだけではなく朝のニュースにも取り上げられているということで、少しでも多くの人が今回の事について考えてくれれば良いですね。
これからもLGBT当事者のひとりとして、声を上げ続けていこうと思います。
[…] ここ1週間くらい色々とあり考えを巡らせていて少し疲れてしまいましたが(前の記事参照)、昨日は気分転換にとミッキーと少し遠出してロンドン西部にあるWestfieldという大きなショッピングセンターへ。 […]
長く思い出さないようにしていた記憶なので、どうしてのそうなったのか、そのときどうだったのかは、はっきり覚えてませんが。
小学校三年生の時です。
体育館での全校朝会の際、
その日生徒に対して壇上で話していた、理科の先生が、僕を名指しで立つよう言い、全生徒に対して「こいつはオカマだ」と笑いを取ったことがありました。
全生徒は、もちろんゲラゲラ笑い、その先生の満足顔だけはうっすら記憶してます。
家に帰ると、当時高学年だった兄に、「恥ずかしかった、もう2度と女の子と遊ばないと約束しろ」と馬乗りにされて何度も何度も殴られました。
もちろん身体も痛かったのですが、その時はじめて「自分とは何か」を完全に見失ってしまったことを覚えてます。
恥ずべきことなんだ。と両親にも言えず(結局、兄が報告し、そこでも散々怒られましたが)。
今回、杉田議員の一連のトピックの中で、僕が一番悲しかったのは、もちろん生産性という言葉の使い方もそうなのですが、学校教育における彼女の同性愛についての捉え方でした。
のぞみさんも言及してたように、無知ゆえの差別は恐ろしく鋭いものになり得ますよね。
9歳の僕が、僕自身を異常なものだと思わざるを得なかった環境はそのほとんどが無知による無意識的な差別・ヘイトから生まれたものだと思います。
今回の杉田議員の考えや、価値観は、
無知・知らないということから生まれた何か黒いものの塊が具現化したもののように思います。
正しさとは何だろうか
僕もここ数日はずっとそのことばかりを考えています。
マサさん
コメント、そしてご自身のお話もシェアして頂きありがとうございます。
小学校という場、しかも全校朝会という場でそのような事が実際に起きたなんて、信じられません。許し難いことですし、その年齢の時期にそのようか事が起きてしまったこと、僕が想像できないほどお辛かったかと思います。
LGBTに関してだけではなく、無知からくる差別は様々な人に向けられていますよね。そして差別される側は差別する側が想像ができないような傷を心に負ってしまいます。杉田議員という存在は、これまでそういった教育をしてこなかったこと、また差別を禁止する法律が整っていない状況を象徴するものかもしれませんね。